2023年6月13日火曜日

逍遥する音楽、あるいは都市生活における野生味

来週 6/20に、即興に関するイベントをやります。即興に関する、というのは、即興パフォーマンスだけでなく、トークイベントも同時開催だから。トークは朋友・原島大輔をお迎えして、「即興と生命/AI」と題している。なぜそんなテーマなのか、というようなことをこれから述べます。

昨年は、即興音楽総本山(と私が勝手に思っている)水道橋Ftarriでソロ即興する機会にも恵まれ(浦ちゃんありがとう)ましたが、その時の演奏は、なんとなくの構成だけは予め決めていた。

構成が決まっていれば演奏しやすく、自分もお客さんも飽きないパフォーマンスになると考えていた。いわば、解のある時間というか。けど、即興に対する自分の認識の甘さを知ったのは、大藏雅彦さんがTwitterで「行き先がわからないことを自分はライブでやりたい」(大意)みたいなことを仰ってて、その意味を知りたい、体験したいと思った。

実際、呼吸を素材にした、和音も旋律もないリズムも一定でない自分の「音楽」でも、行き先を決めないことで時間が積み上がらない、逍遥のような音楽という発想が生まれた。

これは同時に「野生動物を眺めてるみたいだな」というような感触でもあった。一見すると脈絡がないようだが、必然と動機に太く裏打ちされた存在が紡ぐ時間、というような意味で。

野生動物のように時間を紡げるならば、それはAIに因って「アート」が決定的に変化していく時代の分岐点に何か楔のようなものが打ち込めるのではないだろうかと着想した。

この時代に生きる、あらゆるジャンルの作家・創作者、そしてそれらを享受し、支持する人たちにインスピレーションを渡すものになるのではないか。

ただ、自分だけが即興パフォーマンスをして、それを生成AIに対置するより、複数の即興パフォーマンスが並んでいた方が議論が深まると思い、ショーケースとトークイベントの同時開催にすることにした。

ということで、都市の野生味ダンサー/絵描き、中村理さんと、山菜や自家製発酵食品をご馳走してくれる山水画ドローイング/パフォーマンス・アーティストの清水恵みさんにお声掛けした。

中村理さん
ダンサー/絵描き。和光大学表現学部芸術学科卒業。これまでに様々な振付家/演出家の作品に出演。’22には自身初のソロ公演を開催。近年の主な出演作としては『導かれるように間違う』(松井周 作/近藤良平 演出)、『ALIEN MIRROR BALLISM』(岩渕貞太振付) などがある。目に見えるもの/見えぬものの手触りや重さを手がかりに、生活の中から踊りにつながる身体の時間を探しつづけている。

中村さんTwitter、お湯と踊る即興ダンス動画
https://twitter.com/i/status/1668181941626208256


清水恵みさん
山水画を主軸にドローイングとパフォーマンスの手法で制作をおこなう。1999年宮古島で制作と個展、2001年から中国杭州‐北京へ。2016年から東京。海外で必要だったボディランゲージと、中国で書の身体性および行為芸術(パフォーマンス)に出会い、主に海外にて作品を制作、発表。2019年から縦走登山と、修験道や古道巡りを開始。山との関わり、人でないモノに対して作ること、「山を歩く」という即興性の高い行為を平面に落とし込む山水画との関係についてドローイングとパフォーマンスを制作。

清水さん大島・裏砂漠での即興パフォーマンス・ダイジェスト


イベントは、いよいよ来週です。どうぞよろしくお願い致します。 

『生きてますもの、屁も垂れます #1』

6/20(火)
18:10 op/ 18:30 st
at scool(三鷹駅南口徒歩4分)
2,500円(1ドリンク付)

参加アーティスト 清水恵み、中村理、佐々木すーじん

【ご予約】
info.sujin@gmail.com
※件名「6/20」本文に「名前」「電話番号」「枚数」をご記入ください。

トーク・ゲスト 原島大輔
著書に、『クリティカル・ワード メディア論』(共著、フィルムアート社、2021年)、『AI時代の「自律性」:未来の礎となる概念を再構築する』(共著、勁草書房、2019年)、『基礎情報学のフロンティア:人工知能は自分の世界を生きられるか?』(共著、東京大学出版会、2018年)、など。訳書に、ユク・ホイ『再帰性と偶然性』(青土社、2022年)、ティム・インゴルド『生きていること:動く、知る、記述する』(共訳、左右社、2021年)。