2019年7月25日木曜日

『ヒト、ヒト、モノ』に寄せて

美というものを仮に、目を惹きつけるもの・状態を指す言葉だとして、ダンスにおける「美」は、「間(あわい)」の中に起こるものではないかと思う。

無機物と有機物の間、重力と無重力の間、自意識と無意識の間...etc

それらの「間」は、私の目を惹きつける。では、それをいかにして再現可能な形に落とし込むか。

まず私たちは観る者のチューニングを試みる。知覚を新鮮に開かせる為に、些細で間欠的な音を聴かせ、まず耳を研ぎ澄ます。

そしてダンスは自我を主張し過ぎず、かといってそれが無いフリをするわけでもなく、淡々と進む。幽けき音の中で、無機物の存在、その揺らぎと共に進行するダンスに、明瞭に定義できない複数の「間」が散りばめられる。

振付は、水の形象が作り出す線を「なぞる」というところから起こしている。水は、「間」を象徴するものとして、本作では様々な形で登場する。使用楽曲「蘇州夜曲」でも水のモチーフは複数回登場する。

そのドライな低体温の中で繰り広げられる劇的な展開に、誰もが目を惹かれずにはいられない設計を目指した。

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