多くの人が無意識下で行っている(行える)、呼吸という素材を使って音楽を作れないか(時間を構成できないか)、という素朴な基点から、試行を続けています。
"kq"は作曲作品で上演を前提に作られています。
kq譜面(第21回AAF戯曲賞応募時のもの。随時バージョンアップしたものを上演しますが、骨子は同じです)
作曲作品とは、「この道を必ず通る」という指示に従うことで、一つの世界が立ち上がるように構成されているものだと考えます。
"kq"において、指示とは別にシンプルで抽象的なテキストが各シーンごとに付けられています。それは「内と外」(当然「境界」という概念も暗示される)そして「媒体」が想定されており、呼吸音の構成に補助線として機能し、かつ一つの像を結ぶ物語となるよう考えました。
この曲を成立させる為には自身の呼吸、そして身体と向き合わなければなりません。無意識下で行う呼吸を、意識的にコントロールしようとする過程で、自分であるはずなのに決してコントロールしきれない存在をなぞりつつ、演者は時間と空間を構成していくことになります。
コントロールできない自己と折り合いをつけながら、観客とも折り合いをつけること。それが"kq"のコンセプト、「上演を想定した譜面」の真意であり、いちばんの難問でもあるように今は感じています。
観客に対し、私はいま身体と呼吸に負荷をかけていく方向性でこの譜面を捉えることを提示していますが、譜面自体にはもっと異なる方向性もあり得るのではないかと思っています。
この一つの譜面を介して、多様な人が未知なる自己に向き合う契機になることを夢想しています。